静岡刑務所における暴行陵虐事件に対する会長声明 

静岡刑務所は、同刑務所元首席矯正処遇官が昨年11月1日から本年1月24日にかけて受刑者3人を違法に保護室に収容したとして、同人を静岡地方検察庁に特別公務員暴行陵虐の疑いで書類送検し、懲戒処分にしたとの新聞報道が本年12月20日付でなされた。

刑務所においては、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」を遵守して被収容者の矯正に務めなければならない。加えて、わが国が批准している「市民的及び政治的権利に関する国際規約」では、被収容者に対する非人道的若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと及び人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して取り扱われることを保障している。したがって、刑務所において、法律の根拠なく被収容者を処遇することは厳に禁止されていることは言を俟たない。今回の静岡刑務所における刑務官の暴行陵虐事件は、上記の法に反しており、看過できないものである。

ところで、近年、静岡刑務所の受刑者から静岡県弁護士会に対する人権救済の申立が後を絶たない。当会はその対処に追われる実情である。その申立の内容の多くが、法律の根拠を欠くあるいは刑務所の恣意的と思われる処遇(隔離、物品制限等)に関するものである。受刑者(被収容者)に対し、法律に基づき、明確な根拠を示した説明のできる処遇をしなければ、矯正の実はあげられず、却って受刑者の反抗を招来することにもなり、刑務所の本来の目的を達成できないことになりかねないのである。

当会は、静岡刑務所に対し、本件を当該刑務官の単なる個人的な問題として終わらせることなく、速やかに再発防止の対策を講じられるように求めると共に、明確な法律上の根拠を欠く処遇がなされないように強く求めるものである。

2008(平成20)年12月26日
静岡県弁護士会
会長 青島 伸雄

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