静岡市消費生活センターの「格下げ」に対する会長声明 

静岡市は,本年4月から,現在は課相当である消費生活センターを,生活安心安全課の一部局(係)に格下げする機構改革を行うとのことである。

2005年に政令指定都市となった静岡市は,2007年に静岡市消費生活条例を全面改正した際に,静岡市消費生活センターを課相当の部局とし,現在に至っている。いうまでもなく,消費者基本法で定められた「消費者の自立」を援助すべく,消費者行政をより一層充実させるための改革であった。

当会も,市役所内における弁護士による無料多重債務相談会の開催や,消費生活アドバイザーとして弁護士を派遣することなどを通じて,静岡市消費生活センターとは消費者被害の防止,救済のために密接に連携して活動をしてきた経緯がある。

現在,静岡市消費生活センターは,消費者向け講座,生活用品活用バンクなどを行なう消費生活・消費者教育グループ,消費生活相談などを行なう相談・指導グループ,計量検査を行なう計量検査グループに分かれて活動をしているが,質が高く問題解決率の高い相談,独自の教材作成などにみられる消費者教育などは,内外から高い評価を受けており,中でも「高齢者見守りネットワークの構築」については全国的に高い評価を受け,他の自治体の模範ともなっている。

このような活発な活動を行っている静岡市消費生活センターであるが,現在,課相当でありながら,課長職を含め8名の職員と,10名の消費生活相談員で構成されており,活動内容に比して,人不足は否めないところである。

しかも,2012年に制定された消費者教育推進法において,消費生活センターは,地域の消費者教育の拠点となることが期待されており,また,2014年に改正された消費者安全法においても,消費生活センターは地域の消費者の安全のための拠点となることが期待されており,今後,その業務の重要性は大きく増すことになる。

さらに,ここ数年来,気象庁等により静岡県を含む東海地域において近い将来大地震が発生する可能性があると予測されており,静岡市でも大きな被害を想定しているところ,静岡市地域防災計画によれば,東海地震等の災害が発生した際,市民の生活相談を受ける部署として静岡市消費生活センターが位置付けられており,他の地方自治体と比しても,その役割は極めて重要である。

しかるに,このような役割まで期待されている静岡市消費生活センターを,係相当部局に「格下げ」すれば,消費者行政全般の停滞を招き,また,災害発生時の市民の生活相談業務にも対応できず,静岡市が政令指定都市として期待される役割を十分に果たせなくなる危険性があることに,強い危惧感を覚えざるを得ない。

そこで,当会は,従前の静岡市消費生活センターが果たしてきた役割に鑑み,係相当部局に「格下げ」することに反対するものである。仮に係相当部局に「格下げ」するとしても,人員,予算については,従前の規模を維持する,ないし従前以上の規模とすることで,静岡市が消費者行政において,政令指定都市にふさわしい役割を十分に発揮できるよう,特別の配慮をすることを要望するものである。

 

2015(平成27)年2月24日
静岡県弁護士会
       会長 小長谷 保

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