再審請求者に対する死刑執行に抗議する会長声明

  1.  平成29年(2017年)7月13日,死刑確定者2名に対して死刑が執行された。この内1名は再審請求中の者であり,このような死刑執行は異例である。
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  3.  誤判冤罪は死刑が執行された場合取り返しがつかない
     刑事司法制度は人間の作った制度である。それが,どのような高い理念と理想を持って作られたものであっても,その運用を人が行う以上,誤判の可能性は常につきまとう。
     日本では,これまで4件の死刑事件において再審無罪が確定している。その内,島田事件は私達の県,静岡県で起こった死刑冤罪事件である。
     更に,我が県では,2014年3月,静岡地方裁判所が,死刑宣告を受けた袴田巌氏について捜査機関のねつ造による冤罪の可能性を指摘して再審を認めると共に刑の執行を停止して,48年ぶりに釈放している。袴田氏は,現在,地元浜松市内で地域の人々に見守られながら,姉と共に平穏に暮らしている。袴田氏の姿は,私達に誤判の恐ろしさやそれに伴う死刑の恐怖を想像させる。
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  5.  再審請求中の死刑執行に強く抗議する
     以上の現実が存在しながら,金田勝年前法務大臣が,誤判冤罪を主張して再審を請求している者に対して死刑を執行したことに,当会は強く抗議する。
     国はこれに対して,「再審請求権の濫用を許さない」,という趣旨の弁明を行っている。
     しかし,いずれの再審請求が正当なもので,いずれの再審請求が濫用にあたるのか,その判断をするのは,一方当事者である法務省でないことは当然である。
     この様な運用を許せば,事実上再審を請求する権利を奪うことになり,その結果,誤判冤罪が是正される可能性が奪われることになる。
     そして,いかに冤罪の疑いが濃厚な事件であっても,冤罪被害者本人の死刑が執行されてしまえば,死刑執行の既成事実はそこに後戻りを許さない壁となって立ちふさがる。失われた命は返ってこないばかりか,誤った裁判を正す機会も永遠に失われかねない。
     我々は,その様な将来への危険な布石となる今回の死刑執行を許してはならない。
     よって,当会は,今回の死刑執行に強く抗議すると共に,政府に対して,2度と再審請求者に対する死刑を執行しないよう強く求める。

 

2017(平成29)年8月30日
静岡県弁護士会
会長 近藤 浩志

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