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少年法等の改正に関する会長声明


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■ 少年法等の改正に関する会長声明 ■
(2005.09.22)

 平成17年3月1日に国会に提出された「少年法等の一部を改正する法律案」は,先の衆議院解散により廃案となったが,次期国会での再提出が確実視される状況にある。
 しかしながら,同法律案のうち,国選付添人の拡充の点を除いては,いずれも以下のとおり重大な問題が存在しており,当会はこれに反対の意見を表明する。また,国選付添人の拡充についても,基本的な方向性については賛成するが,一部について以下のとおり意見を表明する。


  1. 触法少年に係る事件について警察による調査権限を認め,また,新たに強制処分権限を認めることに反対する。
     今回の法律案は,現状において,14歳以上の少年のみならず,成人においてさえも種々の問題を生じている捜査官による「密室での取調」を,14歳未満の触法少年にまで拡大しようとするものであり,その弊害はきわめて重大である。
     触法少年とは,言うまでもなく,中学1,2年生や小学生に相当する低年齢の子どもたちであって,身体的にも精神的にも,著しく未成熟な段階にあることは明らかである。それにもかかわらず,現行の取調制度に起因する種々の弊害を改善するための根本的な改革を行わないまま,触法少年に対する警察官の調査権限を付与するのであれば,密室での強圧的・誘導的な取調により,あるいは,密室内での警察官との対峙という孤立状況に直面することのみによっても,被暗示性・迎合性の顕著な14歳未満の少年は,容易に虚偽の自白に至るであろう。
     今回の法律案の目的は,「事案の真相を明らかにし,もって少年の健全な育成のための措置に資すること」とされているが,現状の取調制度は,むしろ真相解明を誤らせる大きな危険性をはらむものである。そして,かかる重大な弊害を回避する客観的な担保が何ら存在しないままに,触法少年に対する警察官の調査権限を認めることは,断じて許されてはならない。
     そして,未熟さ,被暗示性,迎合性等の顕著な触法少年に対する調査は,そうした特性についての十分な理解と配慮を前提として,児童心理や児童福祉に関する専門的知見に基づく児童相談所の調査が適切なのであり,児童相談所の機能強化こそが急務である。
     なお,警察への強制処分権限の付与については,上記の弊害を伴う警察への調査権限の付与を前提とするものであり,また,現行制度のもとでも,家庭裁判所による検証・押収・捜索が可能とされ,具体的事案において著しい不都合は指摘されておらず,さらには,その必要性について客観的な検証が何らなされていないという問題が存在する。

  2. ぐ犯少年について警察による調査権限を認めることに反対する。
     ぐ犯少年とは,「将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」である。すなわち,ぐ犯事件は犯罪ではなく,警察に捜査権限がないことは当然であって,警察は,家庭裁判所への送致または児童相談所への通告ができるに過ぎない。そして,かかる現行制度の趣旨は,未だ犯罪行為等には至っていないぐ犯少年に対し,専門機関による福祉的・保護的援助を優先しようとするものである。
     しかるに,犯罪捜査機関である警察に対してぐ犯少年に関する調査権限を認めれば,そもそも「ぐ犯」の定義が曖昧であることとも相俟って,「ぐ犯調査」の名目を以て,子どもたちの行動に対する警察の広範かつ継続的な「監視」が行われ,あるいは,問題を抱える子どもたちを警察が抱え込んでしまうという事態を招くことが強く懸念される。そして,かかる事態が生じた場合,ぐ犯少年に対して本来必要とされる保護的・福祉的援助を遅らせ,問題をより深刻化させてしまう可能性もあり,結果的に少年の福祉を害するおそれも存在する。

  3. 14歳未満の少年について,少年院送致の保護処分を認めることに反対する。
     現行法上,14歳未満の少年については,開放的で家庭的な環境のもとでの教育により少年の更生を図る福祉施設である児童自立支援施設への送致のみが認められている。これは,低年齢で重大事件を起こしてしまった少年ほど,家庭環境に深刻な問題があるなど複雑な生育歴を有することが多く,また,規範・規律を理解できるまでに成熟していないことも多いため,まずは良好な家庭的環境を確保した上での少年の「育て直し」こそが必要かつ有効であるからである。
     そして,現行の児童自立支援施設の関係者は,「大きな問題を抱えた少年が必ずしも処遇困難とはいえない。また,重大事件の事例に対して児童自立支援施設は有効で,予後が非常に良い」旨を指摘している。
     しかるに,14歳未満の少年について少年院送致が可能とされれば,重大事件を起こした少年のケースでは,十分な検討がなされないまま少年院送致とする運用が広まる危険性が高い。そして,そのような場合には,家庭的環境での「育て直し」の機会が保障されることなく,いきなり少年院での閉鎖的・集団的規律訓練による矯正教育が行われることになり,改善効果が期待できないばかりでなく,かえって「少年院送致」のラベリングにより,少年の更生が阻害される危険すらある。
     このように,14歳未満の少年の少年院送致を認めることは,客観的な必要性が何ら検証されないままの安易な厳罰化に等しく,むしろ,少年の真の立ち直りを阻むという重大な弊害を招くおそれが強い。

  4. 保護観察中の少年について,遵守事項違反を理由とする少年院送致等の保護処分決定を可能とすることに反対する。
     保護観察は,保護観察官や保護司による粘り強い働きかけを通じて,少年を更生へと導く制度である。そして,保護観察による少年の立ち直りを実現するためには,少年が担当の保護観察官や保護司に対し,自分の失敗や新たに生じた問題等を自発的に伝え,適切な助言や指導を早期に得られる環境づくり,すなわち,少年との信頼関係の形成が不可欠である。
     しかるに,重大な遵守事項違反を少年院送致の事由に加えることは,「威嚇」によって少年を指導しようとする方向に流れやすく,少年には,かえって,うわべだけを取り繕おうとする姿勢を招きかねないため,失敗しがちな少年を粘り強く支えながら,真の改善更生を目指すという保護観察制度を,本質的に変容させるおそれがある。
     また,ある非行事実に基づいて少年をひとたび保護観察処分に付した後に,新たな非行事実が認められないにもかかわらず,遵守事項違反を理由として少年院送致の処分に付することは,一つの非行事実に対して2種の別個の不利益処分を科するものであって,少年を「二重の危険」にさらすおそれがある。

  5. 国選付添人の選任対象事件の範囲を拡充することには賛成するが,@選任対象事件を一定の重大事件に限定した上で,かつ,選任の要否の判断を裁判所の裁量に委ねる点は,なお国選付添人の選任範囲の拡張が必要であり,また,A少年が終局決定前に釈放された場合に国選付添人の選任の効力が失われることには反対する。
     少年を少年鑑別所に収容する観護措置は,少年の心身鑑別のための措置であるとしても,少年の身体的自由を制約する不利益処分である以上,同観護措置に付された少年には,適正手続保障のため,国費による付添人の選任が権利として保障されるべきである。そして,今回の法律案が,国選付添人の選任要件として,検察官関与事件という限定を削除した点については賛成である。
     ところで,今回の法律案は,国選付添人の選任範囲につき,なお従前どおりの一定の重大事件(故意の犯罪により被害者を死亡させた罪,または,死刑,無期・短期2年以上の懲役・禁錮にあたる罪)に限定したまま,かつ,その選任の要否の判断を裁判所の裁量に委ねている。しかしながら,今後,被疑者国選弁護人制度が導入され,その適用範囲が段階的に拡張されていく中で,捜査段階では国選弁護人の援助を受けていた少年が,家裁送致後には引き続き国選付添人の援助を受けられないという事態は,あまりにも不合理である。そこで,こうした事態を生じないよう,国選付添人の対象事件の範囲の拡張が必要である。
     また,少年が終局決定前に釈放される場合,すなわち観護措置の取消や試験観察決定がなされた場合には,むしろ,調査官のみではなく,国選付添人においても,引き続き少年や家庭に対する援助を継続することが期待される。しかるに,そのような場面で国選付添人選任の効力を失わせることは,少年の改善更生のための有力な資源をあえて切り離すことに他ならず,少年やその家族ばかりでなく,家庭裁判所の期待にも反する事態であって,何ら合理性が認められない。よって,「少年が終局決定前に釈放された場合に国選付添人の選任の効力が失われる」旨の規定は削除すべきである。

                                                          
  以 上
 
2005(平成17)年9月22日
静岡県弁護士会
会 長  三 井 義 廣
 

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