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知って得する弁護士BOX


2007(平成19)年3月12日(月) 10時45分〜10時55分

「法教育」について 2回目

弁護士 塩谷知一

   
「法教育」とは、どういうものなのですか。
確かに、普通に生活している限り、余り馴染みがない言葉かも知れません。
言葉からすると、法律の細かい内容を教育する、などと受け取られるかも知れませんが、そこは少し違います。
単に言うと、社会生活を送るにあたって、ごく基本的なルールを身につけてもらうため、特に中高生を対象に行う教育です。
ともとはアメリカで盛んに行われていた教育のようですが、日本でも、裁判員制度が導入されることもあって、現在では、裁判所、法務省、弁護士会、それぞれが連携して進めています。
具体的には、どんなことを行うのですか。
学校に出向いた上で、取引社会の基本的なルールを講義することは勿論、それ以外にも、ルールというものを身に付けさせるために生徒同士で議論させ、弁護士がアドバイスを与える、というようなプログラムなんかも行なっています。
今、「取引社会の基本的ルール」なんていう言葉が出ましたけれど、中高生には、やや抽象的で難しいような気がしますが。

はい。これについては、具体的なイメージを持ってもらうために、例を出して説明しましょう。携帯電話の怪しいサイトで、そこに載っている電話番号にワンコールしただけで、利用代金として何万円も請求された、なんていう話を聞いたことがあると思います。それとか、「民事債権回収協会」などというもっともらしい名前を名乗る機関から、「最終警告、いついつまでに支払わないと、裁判所から強制執行命令が行きます。」なとという葉書が来た、という経験をお持ちの人も少なくないとは思います。何で、こういう事態になると慌ててしまうんでしょうかね。
それは、取引の基本的なルールがしっかりと身に付いていないからです。

と言うと?
取引においては、人は、自ら合意したものだけに拘束される、っていう根本原則があるんです。逆に言えば、約束していなければ、何にも縛られることはない、ということです。したがって、合意していないお金の請求を受けることはあり得ないし、請求を受けたとしても、払う必要も義務もないんです。先ほどの携帯電話の話で言えば、契約内容の説明もないし、こちらが何万円の利用代金を支払うなんて了承もしていないのに、相手の言い値を支払う義務なんて発生しません。葉書に関しても、自分が何か契約したとか、判子を押したということがなければ、気にする必要はありません。(さらに言えば、裁判手続きを経ずして、いきなり強制執行命令が来るなんてことはあり得ません。)
このような、取引社会の根底にあるルールを、自然な形で理解してもらうことを1つの大きな目標にしています。根本の理解さえあれば、慌てる前に、「ちょっと待てよ」と、思いとどまって冷静に考える機会が与えられるでしょうし、仮に迷った場合でも、様子がおかしいからとりあえず専門家に相談してみよう、という余裕も生まれ、被害に遭う可能性もぐっと低くなるはずです。
「ルールというものを身に付けさせるために生徒同士で議論させる」という話も出ましたが、具体的にはどういうことを行うのですか。
例えば、静岡市において「公園においてスケートボードを一切禁止する」という条例案が作られたとします。この規則について、生徒を、静岡市の立場、スケートボード愛好家の立場、スポーツ用具店の立場、小さい子を持つ親の立場、などにグループ分けし、それぞれの立場から、この規則に対する賛成、反対意見を述べてもらいます。その一方で、他の立場の人の意見を聞き、議論を交わします。その上で、それぞれの立場の意見を踏まえ、お互い妥協するところは妥協して、最終的な条例を作ります。例えば、「土日に限り、一定の大きさ以下の公園において、スケートボードは禁止する」というような。
ねらいは何なんでしょう。
「なぜルールは守らなければならないのか。」という根本的な問いに対し、「それは、一方的に決められたからではなく、皆で話し合った上で、合意したものだから。」ということを、身を持って理解してもらうことを目標にしています。
このように、様々な立場を尊重して自分の意見を述べる、その上で皆が納得できるルールを作る、ということは、日頃の授業ではなかなか経験できないことだと思います。
2007年3月5日と同じ内容を掲載しております。
 

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