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知って得する弁護士BOX


2007(平成19)年3月19日(月) 10時45分〜10時55分

「法教育」について 3回目

弁護士 塩谷知一

   
静岡県弁護士会として、最近行なった法教育の試みには、どんなものがありますか。
昨年、沼津市の公立中学を法教育委員会に属する5人の弁護士で訪問し、社会科の特別授業に参加してきました。
授業は、中学3年生を対象に、1日かけて行われたのですが、午前中は、童話を題材にした殺人事件の裁判を実際に生徒に体験してもらういわゆる模擬裁判を、そして、午後は、裁判に現れた被告人が、果たして有罪か無罪か、それはなぜなのか、ということをグループに分けて討論してもらう、というカリキュラムで行われました。
中学生に裁判を体験させ、結論を考えさせるという試みには、どんなねらいがあるのですか。
間もなく、国民参加型の裁判員制度が始まるということで、裁判の仕組み、進み方を、若いうちからイメージしてもらう、ということが、1つのねらいであることは間違いありません。
ただ、我々として、それ以上に目標としているところは、自分が考える結論を、他人が納得できるように説明する、そして、他人の意見を踏まえて、自分の意見が本当に正しいのかを検証し、1つの結論を導く、というプロセスを味わってもらいたい、ということです。
このプログラムでは、最終的な結論が、有罪であるか無罪であるか、どちらかが正解ということは想定していません。いずれの結論になるにしても、なぜ有罪になるのか、どんな事実に基づいてその結論に至ったのか、そこをじっくりと議論してもらいたいのです。
実際、生徒達の様子はどうでした。

なかなかのものでした。題材というのが、誰でも良く知っている「三匹の子豚」という童話をアレンジしたもので、2人の兄をオオカミに食べられてしまった豚が、自分も食べられてしまうと思い、咄嗟の判断でオオカミを鍋で煮て食べてしまったことについて、豚に殺人罪ならぬ殺オオカミ罪が成立するのか、それとも、正当防衛として無罪になるのか、という事件です。
我々としては、中学生の段階では、法的に判断するとか、真実と嘘を見分ける、とかいう作業に慣れていないため、例えば、「殺されてかわいそうだから有罪」、「オオカミは、既に2人の豚を食べているのだから、殺されても文句は言えない」などという意見が多いのでは、と予測していましたが、大はずれでした。
皆、結論を導くのに苦労しつつも、「もしオオカミを煮ていなかったら、自分が殺されていたかも知れないから、無罪ではないか」「いや、もともと鍋を用意していたのは、最初から煮て食べるつもりがあったとしか思えない。だから、咄嗟の判断というのはおかしい」など、法律家顔負けの意見が出ていました。

弁護士は、どういう形で生徒に関わるんでしょうか。
はい。グループでの議論となると、慣れていないこともあって、どうしても議論が脱線しがちです。ベテランの学校の先生でも、この種の議論において、うまく交通整理をするということは、なかなか難しいことだと思います。そこで、我々は、法律の専門家として、議論をして欲しい点に誘導する、脱線しかけたら、「ここのところはどう考えたらよいかな」などと、結論を分けるポイントを示す、といった形でお手伝いをします。
我々としても、アドバイスの後、生徒が「そっか、そういう風に考えると、やっぱり子豚の言っていることは少しおかしい気がする」なんて形で気づいてくれると、やりがいを感じますね。
で、結局、子豚はどうなるんでしょう。
事前に弁護士5人で議論したところでも、結論は分かれました。「考えれば考えるほど、難しい」という感じで。ですので、中学生が結論が分かれるのは当たり前です。1人1人が、物の見方は違うはずなので、それぞれの意見があっていいんです。大事なのは、まずは誰の意見にも流されず、自分の意見を持つこと。
そして、その意見を他人に説明できること。そして、他人の意見も尊重できること。それさえできれば、もう言うことはありません。
 

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