静岡県に法科大学院の設立を推進する決議 

司法制度改革審議会は、平成13(2001)年6月12日、法曹人口を大幅に増員すべきことと、そのための法曹養成制度として、法科大学院を平成16(2004)年4月に開校すべきことを提言し、政府はこれを受けて本年秋の国会で関連法案を成立させるべく準備を進めています。

東京・大阪などの大都市経済圏に次ぐ規模を誇る静岡経済圏には、多種多様の法的ニーズがあります。

静岡県内に法科大学院を設立し、県民や県内の自治体職員・企業人がそこに学び、その卒業生が法曹として県内に多数定着するならば、地域住民に対する法的なサービスは飛躍的に向上します。そして、法科大学院を地域の法文化発信の一大拠点とすることも出来ます。

当会は、今を機会に、静岡県に法科大学院を設立すべく強力に推進し、最大の努力をすることを決意し、また、強く関係諸機関の協力を求めるものです。

以上、決議します。

平成14(2002)年2月13日
静岡県弁護士会

(提案理由)

内閣の司法制度改革審議会(以下、「司法審」と略称します。)は、平成13(2001)年6月12日に発表した意見書において、司法制度の制度的基盤の強化が実を結び成果を上げるためには、その制度の運営を委ねるに足りる法曹人口の大幅増員が必要だとし、具体的には平成22(2010)年頃には新司法試験の合格者数を年間3000人とすべきであるとしました。

そして、大幅な合格者増をその質を維持しつつ図るための新たな法曹養成制度として、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備すべきであるとして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院を設けるべきであるとしました。

そして、司法審は、この法科大学院を平成16(2004)年4月に開校すべきことを提言しました。

司法審の最終意見を受けて、政府は平成16(2004)年4月の法科大学院の開校を目指して、法科大学院、新司法試験等の整備に関する法案を平成14(2002)年秋の臨時国会に提出することを表明しています。

現在、法科大学院の設置基準については文部科学省の中央教育審議会大学分科会法科大学院部会において、法科大学院の第三者評価基準については法務省において、それぞれ急ピッチで検討されております。

司法審は、法科大学院の設置に関し、地域を考慮した全国的な適正配置に配慮すべきであるとしています。

静岡県は、東京と名古屋の中間に位置する東海道の重要な地域です。

平成12(2000)年国勢調査静岡県速報値によれば、静岡県の人口は約376万7000人(全国比率は約3.0%)で、関東や関西等の大都市経済圏につぐ規模を誇る静岡経済圏には、多くの大企業や中堅企業などが集積しています。

民事の事件数は高等裁判所のある広島や仙台並であり、県内には約220名の弁護士がいますがなお不足しているのが実情です。

また、県内の弁護士は静岡市、浜松市、沼津市、富士市などに集中しており、弁護士がいない市町村も少くありません。静岡県内に法科大学院ができ、その養成段階から地域が深く関与するならば、毎年何十名かの新規法曹が県内にとどまるようになり、弁護士のいない市町村にも定着するようになって、地域住民に対する法的サービスは飛躍的に向上します。

また、静岡県内の地方自治体や企業にも法科大学院の修了生が多数定着するときは、自治体の活動や企業活動を大きく発展させます。

これら地方自治体や企業などの中には、学ぶ意欲と能力を持った多数の有為な人材がいます。

こうした多様な人材が法科大学院に学び、法律家として元の職場において活躍できるようにするためには、是非とも静岡県内に法科大学院を設置することが必要です。

さらに、静岡県内に法科大学院が設置された場合には、これを法文化発信の一大拠点とすることができます。

そこで、当弁護士会は、静岡県における法科大学院の設立を強力に推進し、今後それに向けた最大限の努力をしていく決意であり、また、あわせて関係諸機関の協力を強く求めるものです。

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