「袴田事件」第2次再審請求棄却決定に対する会長声明 

東京高等裁判所第8刑事部(大島隆明裁判長)は,昨日,いわゆる袴田事件第2次再審請求事件(請求人袴田ひで子,有罪の判決を受けた者袴田巌)につき,検察官の即時抗告を容れ,2014(平成26)年3月27日に静岡地方裁判所が下した再審開始決定を取消,本件再審請求を棄却する決定をした。

先の再審開始決定は,犯行着衣とされた5点の衣類の血痕についての本田克也筑波大学教授のDNA型鑑定(以下「本田鑑定」という。)及び弁護側が実施した血痕を付着させた衣類の味噌漬け実験の報告書等を新規明白な証拠として,5点の衣類について警察によるねつ造証拠の可能性を認め,本件について再審を開始し,死刑のみならず拘置の執行も停止して,袴田氏を47年7ヶ月振りに釈放したものである。

即時抗告審においては,本田鑑定についての検証実験が実施されたものの,同実験は,裁判所の指示した検証の方法にも従わない杜撰なものであった。にもかかわらず,本決定は本田鑑定を排斥したもので,「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則が再審にも適用されるとした最高裁「白鳥決定」を無視し,請求人側に立証責任を負わせたに等しいものである。

唯一の救いは,原決定の死刑と拘置の執行を取り消した判断については,それを維持したことにより,袴田氏が直ちに収監されることはないとの点のみである。

本件は事件発生から既に52年の歳月が経過しようとしている。袴田氏は82歳の高齢であり,一刻の猶予も許されない。

当会は,袴田氏が一日も早く再審無罪の判決を得られるよう,今後も出来る限りの支援をすることを表明するものである。

 

2018年(平成30年)6月12日
静岡県弁護士会
会長 大多和 暁

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