- 少年は、心身ともに発達の途上にあり、被暗示性が強く、大人の意見に容易に迎合しがちである。このような少年に寄り添いながら、少年の権利を擁護し、環境調整をし、少年自身の内省を深める支援をしつつ少年審判手続が適正に行われるよう活動する弁護士付添人が果たす役割は極めて大きく重要である。
ところが、2007年5月に導入された国選付添人制度は、検察官関与決定あるいは被害者傍聴の申出がなされた事件以外は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件、死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件に対象が限定されているうえ、付添人選任の要否は家庭裁判所の裁量によるものとされており、極めて限定的で不十分な制度となっている。更に、2009年5月に被疑者国選弁護制度の対象事件が拡大されたことにより、被疑者段階では国選弁護人による法的な援助を受けていた少年が、家庭裁判所送致後は、国選付添人が選任されず、手続の途中で弁護士による援助を受けられなくなるという極めて憂慮すべき事態が生じている。 - 日本弁護士連合会は、このような不都合な制度により少年が置き去りにされる事態が生じないよう、時限的な措置として、全国の会員が拠出する特別会費を財源とする「少年保護事件付添援助制度」を設置し、国選付添人制度の対象とならない事件の少年を援助してきた。しかしながら、少年事件における弁護士付添人の役割の重要性に鑑みれば、少年事件の付添人制度は、弁護士会による私的な援助制度によるものではなく、国費により行われるべきものである。
- 当会は、2007年9月に観護措置決定により身体を拘束された全ての少年を対象に、無料で弁護士との面会の機会を保障する「当番付添人制度」を発足させ、これまで順調に運用してきた。また、会内での新人研修等により、弁護士付添人の担い手となる弁護士の養成に努め、対応態勢の整備充実をはかってきた。
当会は、2007年11月に開催された日本弁護士連合会第50回人権擁護大会の開催地の弁護士会であり、同大会において採択された「全面的国選付添人制度の実現を求める決議」の内容の実現を熱望してきており、2010年1月には、「全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明」を発している。 - 当会は、今後も少年の権利擁護のため全力を尽くす所存であり、国に対して、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも、観護措置決定により少年鑑別所で身体拘束を受けた全ての少年の事件にまで拡大するよう、早急な法改正を行うことを求める。
以上のとおり決議する。
2011(平成23)年6月3日
静岡県弁護士会
会長 齋藤 安彦
静岡県弁護士会
会長 齋藤 安彦