労働者派遣法の抜本的見直し等を求める会長声明 

本年7月31日、派遣業界最大手である株式会社グッドウィル(以下「グッドウィル」という。)は有料職業紹介事業及び一般労働者派遣事業を廃止した。その背景には、グッドウィルが、労働者派遣法が禁止している港湾運送作業について、二重派遣による職業安定法違反の労働者供給事業を行ったこと等により、同年1月11日に東京労働局から労働者派遣事業停止命令および改善命令を受けたこと、さらに、グッドウィルおよび同社従業員3名が、本年6月24日に職業安定法違反幇助により略式命令を受けて有罪判決が確定したことから、同日、厚生労働省が同社に対する労働者派遣事業許可を取消す方針を固めたこと等の事情があった。

グッドウィルは、労働者派遣法が明確に禁止している港湾運送作業に労働者を派遣したのみならず、その派遣形態は、派遣先が同作業に従事させていることを知りながら別の港湾運送作業に二重派遣するという、雇用責任を曖昧させる形態によるものであって、その違法性は極めて強く、グッドウィルが廃業へ至ったことはむしろ当然のことであるといわなければならない。

厚生労働省の発表によれば、本年5月時点においてもグッドウィルの派遣労働者数は1日あたり平均約7000人にも及んでおり、これらの労働者は、日雇派遣として劣悪な労働条件で不安定な生活を余儀なくされていたものであり、今般のグッドウィル廃業によって、職を失い、雇用保険による保障もないままに生活困難に陥る者が多数に及ぶことが懸念される。厚生労働省は、グッドウィルの事業廃止に伴う派遣労働者等への支援について、対策本部の設置と、全国の労働局、ハローワーク、労働基準監督署での対応等を発表しているが、日雇派遣労働者が置かれた状況に照らせば十分なものとはいいがたく、国は、安定した雇用の確保のみならず、当面の住居の確保等についても積極的な支援策を講じるべきである。

そもそも、職業安定法は、事業主が雇用する労働者を他人の指揮命令下において就労させる労働者供給形態を禁止し、直接雇用形態を原則としている。これに対して、現行の労働者派遣法は、このような直接雇用原則に対する例外として派遣労働を許容したものであるが、雇用責任が曖昧・不明確になりやすいという構造的な問題がある。

しかるに、国は規制緩和政策の下、派遣対象業務を拡大するなどして、非正規雇用を増大させ、更にはグッドウィルのような違法な労働者派遣や職業安定法違反の就労を横行させるに至っている。 非正規雇用、とりわけ日雇派遣は、ワーキングプアの温床となり、労働者の生活に深刻な悪影響を及ぼしていることが、かねて指摘されているところである。

当会は、国に対し、グッドウィルの派遣労働者の雇用と生活の安定のため必要な措置をとるとともに、日雇い派遣の禁止や均衡処遇にとどまらない労働者派遣法の抜本的な改正を早急に行うことを求める。

2008(平成20)年9月30日
静岡県弁護士会
会長 青島 伸雄

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