家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明 

法務省が本年2月19日に公表した選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃を内容とする家族法改正案は,14年前に法制審議会が答申した法律要綱案をやっと法案化するものであり,当会は,この家族法改正が早期に実現されることを強く求める。

女性の多くが,現実には婚姻後,旧姓の変更を余議なくされ,職業上も生活上も様々な不利益を被っている。先進国で,婚姻後の夫婦同姓を強制しているのは日本のみである。姓は名とともに自己のアイデンティティの根幹をなすものであり,婚姻後も婚姻前の氏を使い続けるというライフスタイルの選択の自由は,憲法に照らし,十分に尊重されなければならない。

2006年(平成18年)の内閣府の調査によると,60歳未満の年齢層では選択的夫婦別姓導入に賛成する者が反対する者を上回った。2009年(平成21年)9月以降に複数の新聞社により実施された調査ではいずれも,選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数が反対する者を上回った。

選択的夫婦別姓の導入の機は十分に熟しているといってよい。政府及び国会はこうした国民の声を真摯に受け止めるべきである。

また,婚外子の相続差別の撤廃も国際社会の趨勢である。婚外子の相続分差別は,子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別するものであり,憲法13条,14条及び24条2項に反することは明らかである。

最高裁においても,相続分差別を撤廃すべきであるという意見は何度も述べられている(直近では2009年(平成21年)9月30日最高裁判例における補足意見,反対意見等)。

さらに,女性にのみに課される再婚禁止期間についても,主に父子関係の確定のための規定とされるが,DNA鑑定等科学技術の発達により親子関係の確定が容易になったことから,男女間に差を設けるべき根拠は既に失われており,再婚禁止期間の規定は撤廃されるべきである。

また,婚姻年齢を男女とも同一にすべきことも,憲法14条から当然に要請されることである。

1993年(平成5年)以来,国連の各種委員会は日本政府に対し,家族法改正を勧告し続けてきた。とりわけ2009年女性差別撤廃委員会は,家族法改正を最重要課題として指摘し,2年以内の書面による詳細な報告を求め,再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。

よって,当会は,上記のような社会情勢,国民の意向を十分に尊重し,選択的夫婦別姓の導入をはじめ,家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。

2010(平成22)年3月25日
静岡県弁護士会
会長 鈴木 敏弘

ページトップへ戻る