司法修習費用給費制のあり方等について検討する組織の早期設置を求める会長声明 

平成22年11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を1年間延期する法律が国会で可決され成立した。これにより、翌27日から修習が開始されている新第64期司法修習生に対しては、従前と同様、修習費用の給費が実施されることとなった。

この改正法は、給費制を完全に復活させるには至らなかったものの、司法制度改革の成果と問題点を分析し、是正方法を検討するための期間が得られたということであり、貸与制見直しのための大きな一歩を踏み出したものとしての評価が可能である。この法改正のための活動にご協力いただいた830以上もの市民団体、賛同の署名をいただいた67万人以上の市民の皆様、法科大学院生など1000人以上が加入しているビギナーズネット、困難な政治状況の中で改正法の成立に並々ならぬご尽力をいただいた各政党、国会議員の方々、最高裁判所、法務省の各位に、心から感謝申し上げる次第である。

今回の法改正の趣旨は、昨今の法曹志望者がおかれている厳しい経済状況に鑑み、それらの者が経済的理由から法曹になることを断念することがないよう、給費制が継続される1年の間に、法曹養成制度に対する財政支援のあり方について政府及び最高裁判所の責務として見直しを行うというものである。

また、附帯決議の第2項において「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」を求めている。これは、司法制度改革として導入された法科大学院を始めとする法曹養成制度を見直そうとするものであって、法曹を目指す者の数自体が、法科大学院設立当初と比較して約4分の1に急減しており、資質の高い者を国民の権利を守る法曹として確保できなくなるという懸念が、今や現実化しつつあるからである。

多数の問題点が指摘されている司法修習費用貸与制については1年以内に、また、法曹養成制度については速やかに検討を加えることとされているが、遺憾ながら、改正裁判所法が成立施行されてから既に1ヶ月が経とうとしているのに、検討するための組織が未だ立ち上がっていない。平成23年夏頃と想定される通常国会の終了までに法改正が必要となることを考えれば、早期に検討組織を立ち上げ、精力的な議論を開始しなければならない。

その検討組織には、官出身者だけでなく、市民の目線で発言できる方の参加が必要である。また、多数の市民、市民団体の方々が注目していることに鑑み、議論が一般に公開され、市民の意見を反映させる仕組みが取られなければならないものと考える。

先般の大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件を受けた「検察の在り方検討会議」は、大阪地検元特捜部長らが逮捕された後わずか5日で法務省内に立ち上げられ、今後相当の頻度で検討会が開催され、平成23年3月までに改革案をまとめる方針であるとのことである。法改正を必要とする司法修習費用の財政的援助制度については、これと同等以上の早いペースで検討されなければ、国会の附帯決議で定められた期間内に検討し、必要な法改正や措置を採ることは到底望むべくもない。

以上の理由により、当会は、政府及び最高裁判所に対し、司法修習生に対する財政的支援の在り方や、法曹養成制度全体の在り方を検討する組織を直ちに設置し、第二次ともいうべき司法制度改革を押し進めるよう、強く求めるものである。

2010(平成22)年12月22日
静岡県弁護士会
会長 伊東 哲夫

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