本日15日,政府は,参議院本会議において,「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」を強行採決しました。政府は,この法律案を「テロ等準備罪」と呼んでいますが,その実態は「共謀罪」に他なりません。
本法律は,刑法の大原則である罪刑法定主義に反するものであり,国民の表現の自由や思想・良心の自由を侵害する恐れや,国家権力が市民生活や団体の活動を監視する社会となる恐れなど,重大な人権侵害の危険性が指摘されており,日本弁護士連合会や各地の弁護士会,刑法や憲法の法学研究者の団体等から制定に反対する声明,意見が出され,国連特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏からも同様の危険性が指摘される等,国内外から問題が指摘されています。
当会でも,2017(平成29)年4月26日,共謀罪(「テロ等準備罪」)の制定に反対する会長声明を出しました。
ところが,政府は,国会での議論の中でかかる重大な人権侵害の疑念が払拭されていないにも関わらず,参議院法務委員会の採決を「省略」して,本日参議院本会議において本法律を成立させました。
国会法では「特に必要があるとき」は,中間報告を求めることができ(同法56条の3第1項),議院が「特に緊急を要すると認めたとき」は,委員会の審査に期限を附けまたは議院の本会議において審議することができる(同条第2項)とされていますが,中間報告を求める必要性や本会議において審議する緊急性があったとは考えられません。
人権侵害の危険性が高い本法律について,法務委員会の採決を「省略」し,参議院本会議での強行採決に踏み切ることは,議会制民主主義の否定に他なりません。
静岡県弁護士会は,政府のこのような暴挙に対して,強く抗議し,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律の廃止を強く求めます。
静岡県弁護士会
会長 近藤 浩志