日本司法支援センター静岡県支部に浜松支所・沼津支所の設置を求める決議 

平成16年5月26日に国会において「総合法律支援法」が可決成立した。

この法律は、いつでも(anytime)、どこでも(anywhere)、だれでも(anyone)良好な法的サービスの提供が受けられるようにすることを目指したもので、司法過疎が、地域的にも、経済的にも解消することを理想とするものであり、正義へのユビキタスアクセスの理念に基づくものである。同法第2条には、基本理念として、総合法律支援の実施および体制の整備は、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指して行われるものと規定されている。そして、この目的実現のために、日本司法支援センターを設立し、全国にその支部を設けて、法による紛争解決制度の有効な利用に資する情報提供の充実、民事法律扶助業務、国選弁護人の選任に関する業務、司法過疎地域における法律事務に関する業務、犯罪被害者に対する援助等の業務、関係諸団体との連携の確保強化業務などを行うこととされている(同法30条)。

当会は、法律の基本理念を実現すべく、日本司法支援センター静岡県支部の設立に向けて、法務省、日弁連、法律扶助協会などと連携し、会内においても、司法支援センター設置検討委員会を設け、調査や議論を積み重ね、静岡県支部の制度設計やこれに伴うさまざまな提言を行ってきた。

当会が日本司法支援センターの設立に関して強く要望したことは、日本司法支援センターの行う予定の事業をこれまで担ってきた当会および法律扶助協会静岡県支部が実施している市民に対する法的サービスの低下をきたさずに法律の目的を実現するためには、静岡県においては、静岡市だけでなく浜松市及び沼津市においても支所を設け、そこを市民に対する法的サービスの拠点とすべきであるということである。

しかしながら、平成18年4月に開設が予定されている日本司法支援センター静岡県支部は、静岡地方裁判所本庁所在地である静岡市にのみに支部事務所を設ける方向で制度設計がなされているとの懸念がある。

当会は、これまで静岡県民380万人に対する法的サービスを、地域の歴史、地理、経済、人口等の諸要素を総合的に考慮して、静岡、浜松、沼津の三支部において担ってきた。特に、法律相談業務・民事扶助事業の運営並びに国選弁護人の選任体制については、従来から各支部において事実上独立して運営してきた経緯がある。このような事実に鑑みれば、日本司法支援センター静岡県支部の事務所を静岡市1カ所に開設するだけでは、県民に対する法的サービスを却って低下させてしまうこととなる。これは総合法律支援法の理念を損うものである。

したがって、当会は、日本司法支援センター静岡県支部を設立するに当たり、静岡市に事務所を置くだけではなく、浜松市および沼津市に静岡県支部の浜松支所、沼津支所をそれぞれ設置することを強く求めるものであり、それに向けての財政措置を強く要請するものである。

以上決議する。

2005(平成17)年2月22日

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提案理由

平成16年5月26日に国会において「総合法律支援法」が可決成立し同年6月2日に公布・施行された。この法律は、いつでも(anytime)、どこでも(anywhere)、だれでも(anyone)良好な法的サービスの提供が受けられるようにすることを目指したもので、司法過疎が、地域的にも、経済的にも解消することを理想とするものであり、正義へのユビキタスアクセスの理念に基づくものである。同法第2条には、基本理念として、総合法律支援の実施および体制の整備は、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指して行われるものと規定されている。そして、この目的実現のために、日本司法支援センターを設立し、全国にその支部を設けて、法による紛争解決制度の有効な利用に資する情報提供の充実、民事法律扶助業務、国選弁護人の選任に関する業務、司法過疎地域における法律事務に関する業務、犯罪被害者に対する援助等の業務、関係諸団体との連携の確保強化業務などを行うこととされている(同法30条)。

当会においても、法律の目的を実現すべく、早くから会内において司法支援センター設置検討委員会を設け、日本司法支援センター静岡県支部の設立に向けて、法務省、日弁連、法律扶助協会などと連携しつつ、調査や議論を積み重ね、静岡県支部の制度設計やこれに伴うさまざまな提言を行ってきた。

これまで、当会が日本司法支援センターの設立に関して強く要望したことは、日本司法支援センターの行う予定の事業をこれまで担ってきた当会および法律扶助協会静岡県支部が実施している市民に対する法的サービスの低下をきたさずに行うためには、静岡県においては、静岡市にだけ事務機能を置くのではなく、日本司法支援センター静岡県支部の支所を、浜松市及び沼津市に設ける必要があり、そこを市民に対する法的サービスの拠点とすべきであるということである。

しかしながら、平成18年4月に設立が予定されている日本司法支援センターの制度設計は、全国地裁本庁所在地以外には八王子市と北九州市に支所を設置することが認められたのみで、日本司法支援センター静岡県支部は、支所を設ける動きにはなっていない。

しかしながら、静岡市のみに事務機能を設ける制度では、従来、当会および法律扶助協会静岡県支部が実施してきた市民への法的サービスは低下せざるを得ない。何故ならば、これまで当会では、静岡支部、浜松支部、沼津支部の3支部において、法律扶助協会静岡県支部では、静岡部会、浜松部会、沼津部会の3部会において、それぞれが法的サービスを担ってきていた。特に、民事法律扶助事業の運営並びに国選弁護人の選任体制・法律相談業務などついては、従来から各支部において事実上独立して運営してきた経緯がある。これは、静岡県の地理的・歴史的背景とそれぞれの地域がそれぞれ独自の経済圏・文化圏を持っていることから考え出された最良の方法だからである。このような事実を鑑みれば、県民に対する法的サービスをこれまでより低下させずに総合法律支援法の基本理念を実現するためには、日本司法支援センター静岡県支部の事務所を静岡市1カ所に開設するだけでは、到底不可能である。

したがって、静岡市ばかりでなく、浜松市および沼津市を含めた3箇所において支部または支部機能を持たせた支所の存在が市民への法的サービスの提供には不可欠である。

このような支所の設置には当然のことながらそれに伴う財政的な裏づけが必要であるが、日本司法支援センターは、司法制度改革の所産として国民の法的サービスのニーズに応えるために設けられる新たな制度であり、十分な予算を持って制度設計をしなければ所期の目的を果たせない。政府・法務省・財務省は、日本司法支援センターが機能不全に陥らないようにするために、必要な財政的な裏づけをなす責務があると言わなくてはならない。

したがって、当会としては、法務省に対し、日本司法支援センター静岡県支部には、浜松市および沼津市において支所を設置することを求めるとともに、政府・財務省に対し、日本司法支援センターが法律の基本理念を実現することが出来るように、これを裏付ける十分な予算措置がなされることを強く求めるものである。

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