特定秘密保護法案の成立を目指している自由民主党の石破茂幹事長は、11月29日の自身のブログにおいて、「今も議員会館の外では「特定機密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています」、「主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。」と述べた。
しかし、政府与党の幹事長であり、かつては防衛大臣であった石破氏が、国民の街頭行動をテロ行為であると決めつけるというのは、論外であり、憲法が保障する言論の自由・表現の自由を圧殺する暴論である。
この背景には、特定秘密保護法について、その成立を懸念する声が日々急増しつつあり、マスコミ各社の世論調査などによってもそのことが明らかとなっている中、そうした世論を無視して、政府与党は、衆議院において法案の審議を十分に尽くさずに強行採決した。これに対して、多くの国民が国会周辺に集まり、特定秘密保護法案の成立を阻止するための街頭行動をしたことへの危機感があると考えられる。
このような行動は、主権者である国民として当然の行動であり、憲法21条の表現の自由により保護される典型的場合である。それをもって「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」と断じるのは、反対者の意見をテロの名の下に封殺しようとするものであると同時に、以下に述べるとおり、本法案の危険性を示すものである。
すなわち、政府が成立を急いでいる特定秘密保護法案は、第12条2項において「テロリズム」を「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」するための活動と定義している。また、別表4号において、「テロリズムの防止に関する事項」が掲げられており、これが特定秘密の対象となり得ることとされている。そして、石破幹事長が特定秘密保護法の成立に反対する街頭行動をテロと同視したことは、特定秘密保護法においても、同じように政府を批判する国民の活動が広く「テロリズム」に含まれるとして解釈運用される危険性を示すものである。特定秘密保護法案は、世界中で使われているテロリズムの概念とは全く異なる我が国独自の「テロリズム」概念の下、国民全体が国家による監視の対象となる重大な危険性を有しているものである。
よって、当会としては、憲法の保障する表現の自由を封殺しようとする石破幹事長発言に厳重抗議するとともに、その具体的危険性が一層明らかになった特定秘密保護法案の廃案を改めて強く求める。
静岡県弁護士会
会長 中村 光央