2013年6月19日,衆議院経済産業委員会における,総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で,内閣府副大臣が,「商品先物取引についても,金融と同様に,不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁を行った。
これは,総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有することとなった金融庁が,総合取引所で行われる商品先物取引について,不招請勧誘禁止規制を設けない方針であることを示したものである。
しかし,そもそも商品先物取引についての不招請勧誘規制は,手数料稼ぎを目的とする商品先物取引業者が,先物取引を行う必要も希望もない者や資力が十分でない者に対し,突然の電話や訪問によって取引の勧誘を行い,大きな利益が出ることのみを強調し,反面,投資金以上の損失が出る危険性については殆ど説明することなく取引に引き込み,多額の投資金を注ぎ込ませる事によって,深刻かつ悲惨な被害が多発していたことから,消費者・消費者関係団体の長年にわたる強い要望を受けて,2009年の商品取引所法改正によって,ようやく導入されたものである。
その後,2012年8月に出された産業構造審議会商品先物取引分科会報告書においても,「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず,これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため,引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」,「将来において,不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として,実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ,不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である。」との報告がなされており,商品先物取引についての不招請勧誘規制を維持することが確認されたばかりである。
しかるに,上記内閣府副大臣の答弁は,商品先物取引についての不招請勧誘規制が導入された経緯や,上記分科会報告書の内容を全く無視したものであり,到底看過することはできない。
2011年1月の不招請勧誘規制以来,商品先物取引に関する苦情件数は減少傾向にあるとはいえ,不招請勧誘規制を潜脱する業者の勧誘によって消費者が被害を受ける事例がなお相当数報告されている。
このような業者の営業姿勢が見られる限り,実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと判断することはできず,不招請勧誘禁止規制を緩和すると被害が再び増加することが予想される。
当会は,消費者保護の観点から,商品先物取引についての不招請勧誘規制を撤廃することに強く反対するとともに,2014年3月に施行予定の改正金融商品取引法の施行令において,総合取引所において取り扱う商品先物取引を不招請勧誘規制の適用がある取引に指定し,不招請勧誘の禁止を徹底することを求める。
静岡県弁護士会
会長 中村 光央