東京高裁判決を受けて,改めて旧優生保護法下における強制不妊手術及び人工妊娠中絶を受けさせられた被害者たちの全面的救済を求める会長声明 

  1.  当会は,本年2月24日に「旧優生保護法裁判・大阪高裁判決を踏まえ,旧優生保護法下における強制不妊手術及び人工妊娠中絶の被害者たちの全面救済を求める会長声明」を発出しました。ところが,国は,同判決に対して上告受理申立てをしました。被害者の救済が遠のくことになる国の対応は大変遺憾です。
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  3.  先日の大阪高裁判決に続き,3月11日に東京高裁は,旧優生保護法の被害者の権利行使を除斥期間の適用により排斥することは著しく正義・公平の理念に反する特段の事情があるとし,国の法的な賠償責任を認める判決を言い渡しました。そのうえで,東京高裁の裁判長は,「差別のない社会を作っていくのは,国はもちろん,社会全体の責任だと考えます。そのためにも,手術から長い期間がたったあとに起こされた訴えでも,その間に提訴できなかった事情が認められる以上,国の責任を不問にするのは相当でないと考えました。」と所感を述べました。
     私たちは,この二つの高裁判決が出た今,改めて旧優生保護法の被害者ら全員に対する法的な賠償,旧優生保護法によって引き起こされた差別や優生思想の解消等,旧優生保護法問題の全面解決に向けて動き出すべきと考えます。
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  5.  「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」は,対象者に320万円の一時金を支給することを定めています。しかし,本年2月末時点の認定件数は974件にとどまっています。さらに,両高裁判決においては,一時金の額である320万円を大幅に上回る賠償額が認められ,優生手術を受けていない配偶者に対しても慰謝料が認められました。国はこれらの事情を踏まえ,同法を早急に見直すべきです。
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  7.  社会には今もなお,優生思想及び障害者に対する偏見差別が根深く残っているのが現実です。旧優生保護法問題はいまだ終わっておらず,被害は今も続いています。
     被害者の高齢化は進み,解決には一刻の猶予もありません。
     改めて,国には,上告又は上告受理申立をせず,強制不妊手術を受けさせられた等の被害者に対する真摯な謝罪と,全面的な救済,本問題の解決のために正面から取り組むことを求めます。
     当会も,旧優生保護法問題の全面的な解決を目指し,差別のない,誰もが人間としての尊厳が守られる社会が実現できるように,これからも全力を尽くしていく所存です。
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    以 上

 

2022年(令和4年)3月17日
静岡県弁護士会
会長 諏訪部 史人

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