静岡地方裁判所浜松支部の旧優生保護法国家賠償請求訴訟の判決を受け、国に対し控訴をしないことを求めるとともに早期の全面的解決を求める会長声明 

静岡地方裁判所浜松支部の旧優生保護法国家賠償請求訴訟の判決を受け、国に対し控訴をしないことを求めるとともに早期の全面的解決を求める会長声明

 

1.  2024年(令和6年)5月27日、静岡地方裁判所浜松支部(佐藤卓裁判長)は、旧優生保護法に基づき強制不妊手術を受けさせられた原告が国に対して提起した国家賠償請求訴訟について、旧優生保護法の違憲性を認め、さらに除斥期間の適用を制限し、原告の訴えを認める判決を言い渡した。静岡県内において、国に対して旧優生保護法の被害者への賠償を命じた判決は、2023年(令和5年)2月24日静岡地方裁判所判決に引き続き、2件目である。

2. 旧優生保護法は、現行憲法の下にありながら、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」(第1条)ことを目的として掲げ、憲法第13条及び第14条第1項等に反する極めて非人道的かつ差別的な内容により、長年にわたり人権侵害を続けてきた。また、旧優生保護法が優生思想を国策として広め、強制不妊手術を積極的に推進し多数の被害を生んできた事実は、社会に優生思想を根付かせる根源となり、今なお厳然として存在する障害者差別につながっている。

3. 国が社会に優生思想を根付かせたことで、裁判原告を含む多くの被害者において、強制不妊手術が人権侵害であるとの認識を持てず、その認識を持てた時には強制不妊手術実施時から20年以上が経過していたため、除斥期間の適用が被害者救済の最大の障壁となっていた。しかし、2022年(令和4年)年2月22日大阪高等裁判所判決、同年3月11日東京高等裁判所判決以後、多くの地方裁判所及び高等裁判所においては、被害の重大性、深刻性に向き合い、旧優生保護法に基づく強制不妊手術による損害賠償請求を除斥期間の経過によって排斥することは著しく正義・公平の理念に反するとして、その適用を制限すべきとの判断が続いている。本判決も同様の判断である。このような司法の判断は確固たるものといえる。

4. 当会は、国に対し、本判決の内容を真摯に受け止め、控訴することなく確定させることを求めるとともに、同種事件が全国の裁判所で係属している中、被害を訴えながらも解決を見ることなく亡くなった方もいることから、早期の全面的解決を求める。

 

2024年(令和6年)5月27日
静岡県弁護士会
会長 梅田 欣一

 

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