消費者保護基本法改正に関する会長声明 

わが国の消費者政策の基本的方向性と国及び地方公共団体の消費者行政の枠組みを規定する消費者保護基本法が,35年振りの改正に向けて,国民生活審議会で審議され,議員提案により本通常国会に上程される見込みである。

日本弁護士連合会は,2003年(平成15年)10月24日に「消費者保護基本法改正の在り方についての意見書」を発表しているところであるが,当会としても,消費者保護基本法改正にあたって,以下の点が実現されることを求めるものである。

  1. 消費者保護基本法に,社会権としての「消費者の権利」を具体的に列挙すべきである。消費者の権利としては,国民生活審議会報告書が掲げる(1)安全を確保される権利,(2)情報を提供される権利,(3)適切な選択を行う権利,(4)被害の救済を受ける権利,(5)消費者教育を受ける権利,(6)消費者政策に意見を反映させる権利のほかに,(7)公正な取引条件を提供される権利と,(8)消費者団体を組織し行動する権利を加えるべきである。消費者の権利は,理念規定の文中で形式的に触れるという形式ではなく,具体的な権利の項目を列挙することが必要である。
  2. 消費者政策の理念として,「消費者保護から自立へ」を強調することは,消費者行政を二次的・補完的なものへと後退させるおそれが強い。むしろ,「事業者と消費者との構造的な格差」が拡大している現状認識を明記し,消費者の権利を実現する責任ある消費者政策の理念を明確に規定すべきである。
  3. 国及び都道府県による消費者被害の苦情処理・紛争解決機能の強化を積極的に位置づけるべきである。各地で都道府県消費生活センターの統廃合の動きや消費者行政予算削減の動きがあり,国においては国民生活センターの直接相談を廃止する動きがある。しかしながら,広域的な消費者被害への対応や事業者規制権限への連携を強化するため,国及び都道府県の苦情相談処理の機能を拡充強化することが必要である。司法制度改革においては,民間型ADR拡充の議論に偏しているのに対し,消費者紛争に関しては情報・交渉力の格差を踏まえた行政型ADRの強化が重要である。
  4. 現代的な被害が多発している契約トラブルの分野について,契約適正化の施策を規定すべきである。契約適正化の方策としては,情報提供と選択権確保だけではなく,公正な取引条件の確保が不可欠である。
  5. 国の消費者行政組織については,分野別の産業育成省庁が付随的に消費者行政を行うのではなく,消費者庁,少なくとも統一的な消費者行政組織が必要である。消費者保護会議については,消費者代表など外部委員を加えた組織に改革すべきである。
2004(平成16)年1月22日
静岡県弁護士会
会長 河村 正史

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