平成16年6月15日に開催された司法制度改革推進本部法曹養成検討会において、これまで実施されてきた司法修習生に対する給費制を廃止し平成18年度から貸与制を導入するとのとりまとめがなされ、その法案化が進められようとしている。
静岡県弁護士会は、2003年10月10日、司法修習生の給費制堅持を求める会長声明を出し、司法修習生に対する給費制を堅持することを求めたが、今般ここに再度司法修習生に対する給費制を堅持すべきことを強く求める。
司法修習生に対する給費制は、わが国の法曹養成制度である司法修習制度と不可分一体なものとして採用され、全ての司法修習生が貧富の差無く司法修習に専念することを可能とし、法曹三者の統一修習を経済的側面から支えてきたものであり、このような司法修習制度の下でこれまで多様な人材が法曹(裁判官、検察官、弁護士)として輩出されてきた。
今般の司法制度改革では法科大学院を中心とした新たな法曹養成制度が採用されたが、司法修習制度はこれまでの実務修習の有用性が高く評価され、新制度の下でも法科大学院での教育内容をも踏まえ実務修習を中核として実施されることとされている。
従って、給費制を廃止することは、2年ないし3年の法科大学院での就学費用に加え、司法修習生に対し更なる経済的負担を強いることになり、多くの有用な人材が経済的事情から法曹への道を断念する事態も想定され、経済的富裕者のみに法曹資格が与えられるという結果を生じることにつながりかねない。
また、給費制は、法曹三者、とりわけ基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする弁護士の公共性・公益性を制度的に担保する役割を果たしてきたものであり、給費制を廃止することは法曹の在り方をも変質させかねないものである。
今次の司法制度改革では、『法の支配』の理念の下、「司法制度を支える法曹のあり方」を改革し、質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保すること目標としているものであり、国はそのために必要な財政上の措置を講じることが義務づけられているのであるから(司法制度改革推進法第6条)、財政事情を理由として給費制を廃止することは弊害が多く到底容認できないところである。
おりしも医師養成の分野においては研修医の生活を保障し研修に専念できる環境を整えるため国費を支出する動きがみられる中、これまで実施されてきた司法修習生に対する給費制を廃止することは法曹養成を余りに軽視したものであり正に時代に逆行するものと言わざるを得ない。
よって、静岡県弁護士会は、貸与制の導入に強く反対し、ここに改めて司法修習生に対する給費制を堅持することを強く求めるものである。
静岡県弁護士会
会長 小川 良明