静岡空港の建設中止を求める会長声明 

現在、静岡空港建設のための造成工事が急ピッチで進行中であるが、自然環境への影響が危惧されるところである。

「静岡県環境基本条例」(平成8年静岡県条例第24号)は、その前文で

「……近年の社会経済活動は、私たちの生活の利便性を高める一方で、資源やエネルギーを大量に消費し、自然の再生能力や浄化能力を超えるような環境への負荷を与えることになり、地球の環境にまで大きな影響を及ぼすようになってきた。……社会経済活動の在り方を見つめ直し、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築と地域特性を生かした自然と人との共生の確保に努め、美しい県土を創造していかなければならない。」

とうたい、第2条では「野生生物の種の減少」を防止することを定め、第4条でその基本理念にのっとった施策の策定や実施が県の義務であると確認している。

静岡県は静岡空港建設計画に伴い環境影響評価を行った。しかし、その対象とするに値する石雲院の森のムササビへの影響が検討されておらず、その他の動物についても生態系としての具体的検討が不十分であるといわざるを得ない等、動物の保護対策に付き疑問がある。又、植物の保護対策とされている移植につき、その活着の成果が得られないうちに本来の生育地域を破壊してしまうことを認めるものであって、条例の趣旨に照らし疑問を指摘さぜるを得ない。 これらの疑問が解消されないままに工事が進行し、将来、環境破壊という結果が残ったということになれば、静岡空港建設は地球上の種の一部の絶滅に寄与したものいうことになりかねず、取り返しがつかない。

そこで、

  1. 静岡県は、「貴重種」及び「静岡県において注目すべき種」とされる動植物の個々の種のみでなくそれをとりまく生態系としての保護対策につき、より詳細で具体的な検討をし、効果的で具体的な保護対策の実施に至るまでは、空港造成工事並びに建設工事を中止しておく等、適切な処置をとるべきである。
  2. 「貴重種」とされる植物の移植にあたっては、移転先において相当割合が安定して確実に根付くことができたという成果が得られるまで本来の生育場所の工事を中止し、現状を保全しておくべきである。
2000(平成12)年5月30日
静岡県弁護士会
会長 福地 明人

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