貸金業制度ならびに出資法の上限金利の見直しを検討していた金融庁は、9月5日、自民党金融制度調査会などに対し、検討結果を正式に報告した。
新聞報道などによれば、その報告内容は、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利に引下げるとするものの、同法の金利区分を変更して、元本10万円以上50万円未満のものについては従来の18%から20%に、元本100万円以上500万円未満のものについては従来の15%から18%に引上げ、施行までに1年、経過措置として3年間はいわゆるグレーゾーン金利を存置するというものである。さらに、その後最長5年間にわたり、50万円1年以内もしくは30万円半年以内の少額短期貸付及び事業者に対する500万円3か月以内の貸付について年利28%の特例高金利を認めるなど、その実体は制限金利を引上げたうえにグレーゾーン金利を長期間温存しようとするもので改悪にほかならない。
このような金融庁の姿勢は、「貸金業制度等に関する懇談会」の大勢意見を無視するものであるばかりでなく、300万人を超える高金利引下げを求める署名や全国39都道府県・870を超える市町村議会(静岡県においては県議会はじめ全23市・12町)で採択された同趣旨の意見書に現れた、多重債務問題の早期かつ抜本的な解決を強く望む国民の声に逆行するものである。現行の利息制限法の制限金利ですら、一般銀行金利に比してかなり高く、その金利区分を変更することにより実質的に制限金利を引上げることは到底容認できない。また、低所得者や零細事業者に対する貸付については、7月6日に自民党・公明党がまとめた「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」に示されたセーフティーネットの拡充によって対応すべきであり、脱法的借替え等によって高金利の負担が長期化することになりかねない特例措置は創設されるべきでない。
今回の貸金業規制法、出資法の改正は、貸金業規制法第43条のみなし弁済規定の適用を否定し利息制限法による救済をはかった最高裁の相次ぐ判決を踏まえたものでなければならず、当会は、政府ならびに国会に対し、以下のとおり、直ちにグレーゾーン金利を廃止し、例外なく上限金利を引下げること等を求めるものである。
- 現行利息制限法の金利区分を変更することによる実質的な制限金利引上げを行わないこと。
- 出資法の上限金利年29.2%を、改正法施行と同時に、利息制限法に定める年15%から20%の制限金利まで引下げること。
- 貸金業規制法第43条のみなし弁済規定を廃止すること。
- 少額短期貸付や事業者向け貸付についての特例高金利を認めるべきでないこと。
- 保証料などの名目で脱法的に利息を徴求することを認めないこと。
以上
静岡県弁護士会
会長 興津 哲雄